「安全・安心」とは

 この1年か1年半くらいの間、「安全・安心」という言葉をやたらめったらと見るようになりました。普段「安全規格」なるものを見ている私としては、その言葉を口にしている人や書いている人がどういう意味で使っているのかと、気になったりもします。

 

 そこで、ISO/IEC GUIDE 51:2014という文書にある、安全についての記述をご紹介しましょう。

 

・一般の人々には、「安全」という言葉は「あらゆる危険から守られている状態」と理解されることが多い。しかし、これは誤解である。「安全」とは、認識された危険から守られている状態に過ぎない

・「安全」という用語は、リスクがないことを保証するものと誤解される可能性が高い。(原文そのままの翻訳ではなく、私自身による多少の意訳や省略を含む。)

 

 この文書は、ISO (国際標準化機構)とIEC (国際電気標準会議)が一緒に作成した文書で、新しい規格(安全のための規格とは限らない)を作る際や既存規格を改訂する際には、この内容に沿ってその要求内容とかを考えてね、といったことが書かれたガイドです。

 1つ目の文は、認識されていない危険、つまり予想もしない危険からは守られてはいない、という意味です。そんな危険ですから、そもそもそんなものから守られているかどうかさえ分からないでしょう。

 なお2つ目の文にある「リスク」とは、その文書では「危害の発生確率とその危害の重大度の組み合わせ 」と定義されています。ここでいう「危害」とは、「人の健康への傷害や損害、財産や環境への損害」のことで、これも定義されています。

 

 そして「安心」とは、「不安や心配がないこと」です。「なんだか恐ろしいけど、エラい人が大丈夫と言うのならまあ安心」ということはあり得るでしょうが、これはその人の主観に過ぎません。「エラい人」がどれだけスゴイ人であったとしても、一般の人々が広く安心できるということはまずあり得ないでしょう。

 

 かつて日本に、「原子力安全委員会」というものがありました。2011年の東日本大震災、福島第一原子力発電所事故を経て、2012年に「原子力規制委員会」という名称に変わったのは、この委員会のチェックに通ったものは安全である、つまりリスクがない(ことが保証される)などと誤解されることが考えられるため、とかいうのも理由の一つだったような気がしますが、どうだったでしょうか。

 

 あっ!

電気用品安全法を守れば、リスクはない!

PSEマークはその証!

 

なんてトンデモナイ誤解がされていないか!ああー安心できないですねぇ…。