中華電源

 中国製の直流安定化電源をAmazonで購入しました。税込み7499円。DC入力機器の試験はもちろん、ステッピングモーターのアブノーマル試験をモーター単体で行う場合などに使う予定です。既に持っている交流安定化電源にもDCモードはあるんですが、電流が最大2.25Aまでしか出せないので、DC30V, 10Aという仕様のものを買いました。

 

 このところこのような中国製の製品が「中華スマホ」とか「中華タブレット」などと呼ばれている様子をよく見ます。安かろう悪かろう、というニュアンスを込めて揶揄しているのかもしれませんが、必ずしも全てがそうではないように思います。昔から中華料理が大好きな日本人が、一種の愛情表現として「中華○○」と呼んでいるのではないでしょうか。少なくとも私はそんな思いで、今回購入した直流安定化電源を「中華電源」と呼びます。

 

 そんな中華電源について、Amazonのレビューとしてコメントを書こうかと思いましたが、やはり製品安全の観点からのコメントにすべく、ここに書くことにしました。他の中華メーカーも同様かどうかは知りませんが、一つの例としてご紹介します。

 

○良い点

・小さい(画像の通り、ものすごくコンパクトなサイズ)

・軽い(1.6kg。従来の感覚では信じられない軽さ)

・安い(従来の感覚では信じられない安さ。ディスプレイがLCDじゃないモデルは更に安い)

・必要最小限の機能(少なくとも自分は使わない機能は一切無し)

・USBポートがある(数々のUSBデバイスに囲まれている今日、これは便利)

・見た目がキレイ(キズとか汚れとかは特に無い)

・ちゃんと動作する(当たり前だけど、これも大事なこと)

・電圧、電流調整もし易い(粗調整と微調整のつまみが別れてないが、まあ問題無く調整可能)

 

 

○アブナイ点

・付属の電源コードにPSEマーク無し

 PSEマークの無い電源コードの販売は電安法違反。

・交換ヒューズ、指定は5Aなのに3.15Aが入ってた

 指定より小さい定格電流のヒューズなので、まあ危険は無いだろうが、これは安全というより品質管理の問題。指定より大きいものが入っている可能性も否定できないと思えば、やっぱり危険か。

・定格の表示がバラバラ

梱包箱:AC110V, 60Hz

本体:AC115V±10%(周波数表示無し)

取説:AC230V±10%, 50Hz(AC115V±10%, 60Hz)(2種類の定格についての説明は無し)

 この表示からすると、少なくとも公称電圧AC100Vの日本では使えない。±10%とかいうのはあくまで公称電圧からの変動に対する許容範囲を示すものであって、AC115V-10%はAC103.5Vなのでやっぱり使えない。

 なお定格電圧はともかく、周波数に注目しても、少なくとも東日本の50Hz地域では使えない(→神奈川で使うけど)。

・本体に必要な情報の表示が不十分

 本体にヨーロッパのCEマークが表示されているが、この手の製品なら評価規格はEN61010-1。とすると、本体に定格電流、定格容量、もしくは定格消費電力のいずれかの表示が無いのはおかしい。また、ブランド名はあるものの、EU市場における責任者の住所表示も無い。ということは、EN61010-1を本当に評価したのかどうかも疑わしく、CEマーク自体も怪しいという疑念が…。

・取説に必要な情報の表示が不十分

 EN61010-1で安全を評価しているのなら、取扱説明書にもそれなりの情報の記載が必要。しかし、いろいろと不十分。そもそもメーカー名さえ載ってない。

・製品内部のアース線、固定が不十分

 EN61010-1で安全を評価しているのなら、製品内部のアース線(保護接続線)が、樹脂(プリント基板)を挟む形で固定されているのはダメな状態。ついでに、ネジの緩み止めも無い(→適切に固定できる場所が無かったので、とりあえず緩み止めだけ追加)

また、アース線のリング端子の付け根の部分に、芯線が直角もしくはそれ以上に曲げられるようなストレスがかかった状態(安全に関係ない他の部分でも同じような箇所が複数)。即座に危険を引き起こすものではないが、構造的に望ましくない(→アース線の引き回しは自分で修正)。

・製品内部の電線、危険電圧との絶縁処理が不十分

 即座に感電を引き起こすほどのものでは無いが、EN61010-1の要求を考えればNG(→自分で絶縁チューブを追加してある程度修正)

・製品内部の電線、ハンダが不十分

 電源ラインから来る電線と、最大10Aが流れる電線が、いずれもプリント基板へのハンダ付け部でハンダの量がちょっと少ないように見えた(→自分で修正)

 ・付属のリード線、ハンダがチョン付け

 バナナーワニ線のワニクリップ部で、リード線のハンダ付け部分がチョン付け状態。最大電流10A仕様の製品に付属のリード線としてはお粗末(→自分で修正)

 

○まあ気にしない点

・内部のヒートシンクを兼ねた金属板に、ベタベタと指紋が付いてる(→掃除した)。

・ネジ固定されている部分に、なぜかベッタベタの接着剤も使われている部分がある(意図不明)。

・内部のファンの電線が多少つっぱり気味(→自分で修正)。

・金属のカバーを固定するネジがガッタガタのタッピングネジ。一度カバーを開けただけで、8箇所中2箇所で受け側のネジ山が潰れた(→他の余ってたネジを多少無理やり突っ込んだら固定できたのでまあOK)。

・ブランド名で検索しても、実際に製造しているメーカーの情報が全然分からない。謎。

・保証書が付いてるが、メーカー名、連絡先、製造番号等の情報は何も無し。裏面に「检验04」というハンコが1つ押されているのみ(检验=テスト)。実を言うと、上記の通りメーカーは謎で、梱包箱にMade in Chinaとあるものの、日本のメーカーでも中国で製造してることはよくあることだから、要するにこの製品が中国のメーカーによる中華品であると判断する明確な根拠は、このハンコの文字が中国語であるという点と、販売者が中国の深セン(Shenzhen)にある会社である、というくらいしかない。その意味では、もしかしたらこれは中華品ではないという可能性も否定できないかも…。


 というわけで、アブナイ点だけを見れば、やっぱり中華品はちょっとな…という話になるでしょう。私も最初は、日本のメーカーの中古品を探しました。しかし結局、安い!小さい!軽い!必要最小限の機能!この4連射にやられました。もちろん、ある程度の事態は想定し、覚悟の上で買いました。自宅に届いた後、電源を入れる前にまずカバーを開けて中身を確認し、アブナイ点をいろいろと見た上で、できる範囲で修正し、絶縁抵抗計で大事な部分に十分な抵抗があることを確認した後、ようやく電源を入れたくらいです。まあ、こういうふうに自分である程度確認ができるものだからこそ、とりあえずこうして一種の愛情さえ持って使えるわけですが、もしそうでなければ、やはりまだ不安感が拭いきれません…。

 

 とはいえ、少なくとも自分にとっては、上に書いたアブナイ点を十分以上に補うもので、ある意味でこれぞ中華の本領発揮!と思ってます。購入を検討されている方は、どうぞ参考になさってください。