中華ACアダプター

 中華ACアダプターについて、最近2件立て続けに直面した事案があるのでここでご紹介します。

 電安法の適合宣言書にある型式区分の項目のうち、

 

「入力側の定格容量」が実測値と合わない

 

という事案です。

 具体的には、例えば型式区分としてこのように書かれていたりするんですが、実際に測定してみると、AC100V入力時に30VA以下だったりするのです。これが、互いに全く関係の無い、異なるメーカー製品2つで立て続けに見られました。どちらの製品も、登録検査機関が発行したテストレポートではカバーされているにもかかわらずです。なお、適用された技術基準はそれぞれ異なっています。片方の技術基準では、「こういう負荷回路で測定すること」という指定があります(もう片方の技術基準には特にありません)。といっても、指定された回路は特殊な回路ではないので、電子負荷で普通に直流の定格出力を引き出すだけなら、入力側の容量(というよりも入力電流)の値がそれほど異なる数値が出てくるとはちょっと考えにくいようなものです。実測値が型式区分の値と合わないということは、その適合証明書で技術基準への適合性を証明されている製品とは異なるということを意味するわけですから、大変な問題なのです。

 

 ではどうしてそんなことになるのか。以下は想像に過ぎませんが、その原因としては、

・1つ目の製品は、製品のバラつき

・2つ目の製品は、勝手に部品が変更された(?)

ってなところじゃないかなと思っています。

 

 1つ目の製品については、型式区分の数値にわずかに満たない程度で、誤差の範囲内とも言えるであろうレベルなんです。ここで誤差というのは、製品自体のバラつきによる誤差と測定の誤差、このどちらかもしくは両方です。実測値が型式区分の数値にわずかに満たない程度なら、本質的な安全という意味においては何ら問題はありません。少なくとも、国際基準では問題無く、あくまで日本のルールとしてそうなっているというだけの話です。つまり私がここで主張したいのは、そんな誤差と言える程度の違いによって扱いが変わってしまうという、

「型式区分」という制度の欠陥

です。

 

 ACアダプター(直流電源装置)の「入力側の定格容量」は、

(1)10VA 以下のもの
(2)10VA を超え 20VA 以下のもの
(3)20VA を超え 30VA 以下のもの
(4)30VA を超え 40VA 以下のもの
(5)40VA を超え 50VA 以下のもの
(6)50VA を超え 60VA 以下のもの
(7)60VA を超え 70VA 以下のもの
(8)70VA を超え 80VA 以下のもの
(9)80VA を超え 90VA 以下のもの
(10)90VA を超え 100VA 以下のもの
(11)100VA を超え 200VA 以下のもの
(12)200VA を超え 300VA 以下のもの
(13)300VA を超え 400VA 以下のもの
(14)400VA を超えるもの

こんなふうに区切られているんですが、100VAまでは10ずつの刻みであることも、100VAを超えると100刻みになることも、そして400VAを超えるとなぜか上限無しになることも、まったく意味不明&根拠不明です。今もこの謎方式が続いているのは、「昔からこうだったから」ってなもんでしょう。そんなもんに振り回される日本の輸入事業者様が気の毒に思います。

 

 

 そして2つ目の製品ですが、こちらは誤差レベルとはちょっと思えない程度に数値が異なっていました。製品およびその内部にある部品のバラつきということももちろん考えられます。もしそうならそれほどまでに影響が大きいバラつきがある時点で既に不安ですが、

メーカーが部品を勝手に変更したんじゃないか?

という疑惑です。部品の変更によって型式区分が変わってきてしまうのなら、改めて登録検査機関に試験を依頼し、また別の適合証明書を発行してもらう必要があります。これは諸外国には無い日本独自のルールなので、そういった手続きが必要であることを、メーカーが知らなかったのかなと…。

 

 なおその2つ目の製品、出力側電線およびコネクターの選定についての疑問やハンダ付けの状態の悪さといった、型式区分の件とは別の懸念があって、その製品の輸入販売は見送られたそうです。技術基準というのは最低限度の安全性を定めたものに過ぎないということを理解された上での、賢明なご判断であったかと思います。「PSE認証取得で安全安心!」などと、ちょっと意味の分からない宣伝をされている他の数多の事業者様にもぜひ見習っていただきたいところです。